SEOに携わっていると、「カニバリ」という単語を頻繁に耳にしませんか?
カニバリとは、キーワードカニバリゼーションのことを指し、直訳すると「キーワード同士の共食い」になります。
わかるようで、わからないカニバリの概念ですが、実はサイトのSEOコンディションを低下させてしまう恐れのある深刻な問題です。
そこでこの記事では、次の4点についてご説明します。
- カニバリとは何か?
- カニバリのSEO影響
- カニバリの特定方法
- カニバリの解消方法
SEOコンサルティングをしていても、カニバリについての質問をいただくことが非常に多いです。
この記事を通して、みなさんが自分自身でカニバリの特定ができるようになり、解消まで持っていけるようになることを目標に丁寧に解説していきたいと思います。
すでにカニバリの概念にについて理解している方は、カニバリの特定方法・解消方法の箇所から読むことをおすすめします。
具体的な解消フローの解説は動画でも実施しており、実際の画面をお見せしながら解説していますので、合わせてご視聴いただくことで理解が深まるかと思います。
キーワードカニバリゼーション(カニバリ)とは?
キーワードカニバリゼーション(カニバリ)とは、自サイトの複数ページが「同一検索キーワード」「同一検索意図」に対して競合し合っている状態のことです。
カニバリが発生することで、CTRや被リンク、コンテンツ、コンバージョンなど、各種指標を2つに分割してしまうため、本来よりもSEOのポテンシャルが発揮できなくなってしまいます。
カニバリにも、いくつかのパターンがありますが、大きくは下記の2つのパターンを押さえておけば良いでしょう。
- 検索結果画面に複数の自サイトURLが表出している状態
- 検索するタイミングによって表出するURLが変わる状態
上記だけ見ると、どちらも検索結果画面には表出しているため問題ない、と思うかもしれません。
しかし、上記のようなカニバリが発生することでSEO的にネガティブに働くことがあります。
これよりカニバリが発生した際に起こるSEO的なネガティブな影響について解説します。
カニバリ以上に問題となるのは重複コンテンツですので、もし重複コンテンツで悩んでいる場合には本記事ではなく下記の記事をご参照ください。

キーワードカニバリゼーション(カニバリ)が引き起こすSEO的なネガティブ影響
カニバリが発生すると、次の2点でSEO的にネガティブに働きます。
- SEOの評価が分散する
- CVRの機会損失が起きる
それぞれ解説していきます。
SEOの評価が分散する
カニバリが発生すると、本来的にあったはずのSEO評価を正当にGoogleに評価してもらうことができなくなります。
検索結果に複数のページが表出していたり、検索するタイミングによって表出するページが変わるということは、「検索エンジンがサイトのどのページを表出すべきか」を正確に把握できていないということです。
Googleの検索エバンジェリストのジョン・ミュラーの発言がカニバリの影響を抽象的にではあるものの、イメージしやすく表現していました。

「カニバリが発生している状況は、子供たちが一列に並びながらも、同一サイト内の2人が共に一番になりたいと思って争っているような状況。このような状況では、最終的に他の誰か(競合サイト)が先に滑り込むことになる。カニバリを発生させてサイトの評価を水に流してしまうようなことはやめるべき。」
要約すると、同一サイト内で不毛な争いをしているうちに競合に順位を抜かれてしまいますよ、と書かれています。
同一サイト内で不毛な争いをすることによって、下記のようなことが発生するでしょう。
- クリックが分散する(CTRが分散する)
- 内部・外部ともに被リンク評価が分散する
- クロールバジェットが分散する
- 類似コンテンツとして評価が下げられる
それぞれ解説していきます。
クリックが分散する(CTRが分散する)
カニバリが発生して、検索結果面を自サイト内で競合すると、クリックが分散してしまいます。
本来、1ページに対して100セッションあったはずが、カニバリが発生したせいで50になったとします。
そうなると、
- (状況によるが)CTRが下がる
- ユーザー行動指標がページに貯まらない
が起こり、エンゲージメント評価の部分でSEO的にマイナスになります。
Googleが明確に述べているわけではないですが、検索結果面からのCTRやサイト内ユーザー行動指標(エンゲージメント指標)は、確実にSEOの順位決定要因に使っているとしか思えない数々の研究や事例があるため、上記を分散させてしまうことは非常にもったいないです。
内部・外部ともに被リンク評価が分散する
リンクによる効果は、いつの時代もSEOで最重要です。
カニバリが発生した際には、外部リンクも内部リンクも分散してしまうため、本来的にもらえたはずのリンクジュースが100%はもらえないことになってしまいます。
特に、外部リンクが分散してしまうと非常にもったいないです。
例え、現状はリンク評価が分散していなかったとしても、カニバリが発生していることでこの先分散してしまう可能性が非常に高いので、気づいたタイミングから早急に解消しておくべきでしょう。
クロールバジェットが分散する
ページが多くなれば、それだけクローラーのリソースを食います。
SEOでは、数少ないクローラーのリソースをどれだけ綺麗にサイト内を差配できるかが、結構肝になります。
特に、フレッシュネス指標と呼ばれる「最新の情報を好む」Googleのアルゴリズム的にも、定期的に(頻繁に)クローラーをコンテンツに対して回さないと、順位が次第に下落してしまいます。
各種ページのクロール頻度を高めるためにも、クロールバジェットの無駄遣いを極力避けるため、カニバリのような不毛な状況は早急に解消しましょう。
類似コンテンツとして評価が下げられる
同一の検索キーワード・検索意図に対して、複数のページがあることが、直接的にサイトやページの評価を下げる可能性も0ではありません。
両方のページがインデックスされており、検索結果にも出続けているのであれば、基本的には重複ページ扱いはされていないので、クリティカルな問題ではないと思うものの、類似率が高すぎる場合には、両方のページの評価を下げるアルゴリズムが働く可能性も0ではないと思います。
SEOは正解がわからない類のものなので、もちろん類似ページがあることで本当に評価が下がるのかどうかはわかりませんが、少しでもネガティブな可能性があるのであれば、基本的には対処すべきでしょう。
上記のように同一サイト内での評価分散を引き起こして、本来持っている100%のポテンシャルがGoogleに伝えられなくなってしまうことは避けることをおすすめします。
CVRの機会損失が起きる

カニバリが発生すると、CVRの機会損失にも繋がります。
上記のように1位と2位でダブルリスティングをしていた際に、CVRの低い記事が上位にきてしまうことで、本来であれば獲得できたであろうCVが取れません。
日によって表出するURLが変更されるようなカニバリの場合にも、CVRの低い記事が表出している日にはCVRを毀損してしまっているでしょう。
PLP(Preferred Landing Page)と呼ばれる「対象の検索キーワードのランキングに優先的に表示させたいページ」というSEOの概念が存在するのですが、PLPの不一致が起きた時にはかなりの確率でCV毀損していることが多いです。
このように、カニバリが発生するとSEOにとってネガティブに働くため、自サイトでカニバリが発生していないかどうかは定期的に確認すべきです。
ここから、どのようにカニバリを特定するかをお伝えします。
キーワードカニバリゼーション(カニバリ)の特定方法
カニバリの発生は、確認することが可能です。
ここでは、3つの方法をご紹介します。
- GRCを利用する方法(有料ツール)
- site:コマンドを利用する方法
- Googleサーチコンソールを利用する方法
- Ahrefsを利用する方法(有料ツール)
- SEMRushを利用する方法(有料ツール)
1. GRCを利用する方法(有料ツール)
GRCという順位計測ツールを利用することで、カニバリを簡易的見つけやすくなります。
具体的には、計測した順位が確認できる画面の右下にある日付ごとの順位と表出URLが一覧で見られる箇所を確認します。
基本的には下記のスクリーンショットのように、LPは固定されているはずです(Google URLの箇所が常に同一)

ただし、カニバリが発生していると、次の画像のように表出URLが変わっており、順位も大きく落ちているのがわかるかと思います。

このように、順位だけでなく、どのURLが検索結果面に出ているのかも定期的に確認していくことは非常に重要です。
GRCは、それを簡単に確認することができるので非常に使い勝手がよくおすすめのツールになっています。
GRCは順位取得以外にも、競合調査やキーワードマーケティングで非常に有益なツールにも関わらず、圧倒的に安価であるため、ぜひ一度利用してみることをおすすめします。
2. site:コマンドを利用する方法
site: というGoogle検索のコマンドを利用する簡易的な方法もあります。
「site:example.com テキスト」とGoogleで検索します。
example.com にはカニバリが発生していないかどうかを検索したいドメイン、テキストにはカニバリが発生していないかどうかを確かめたいキーワードを指定します。

このコマンドを利用することで、指定したドメインの全ページのコンテンツに対してテキスト検索をします。
この際の検索結果画面で、自身が表出させたいページが最上位に表出しなかった場合にはカニバリを疑いましょう。
ただし、site:コマンドでの調査はあくまで簡易的ですので、ざっくり当たり付をする程度の使い方です。
よって、site:コマンドを利用してカニバリの疑いがあるとなった場合には、次の「Googleサーチコンソールを利用する方法」に移行して、より精緻に確認しにいきましょう。
3. Googleサーチコンソールを利用する方法
Googleサーチコンソールを利用する方法が、最も精度高くカニバリを特定することができる手法です。
ただ、URL単位、キーワード単位で確認していくのは、かなり時間もかかるので、GRCやsite:を利用した方法でカニバリが疑わしいとなったものに限定して見に行くのが効率的かと思います。
Googleサーチコンソールの検索結果のパフォーマンス画面で「カニバリを疑うキーワード」を指定してレポートを見てみます。

上記のように複数のページが出てきたらカニバリの疑いがあります。
また、上記のように「表示回数」が似たりよったりですと、検索タイミングによって表出LPがぶれていたり、ダブルリスティングしている可能性も高く、カニバリの可能性が非常に大きいです。
一つずつ検索キーワードを指定するのは大変なので、やはりGRCやsite:コマンドである程度フィルタリングをした上で調査をするのが良さそうですね。
4. Ahrefsを利用する方法(有料ツール)
Ahrefsを契約している方は、上記の動画(英語)のやり方も参考になります。
データをダウンロードして、用意されているGoogleスプレッドシートのテンプレートに貼り付けるだけなので、とても簡単です。
下記の画像で赤文字にしてあるものが、カニバリが発生しているKWセットです。

上記のようにアウトプットされるスプレッドシートを確認すると、一部カニバリが発生していないものも出てしまっているので、最終的に目視のチェックは必要になります。
ただ、そこまで大量に目視する必要もなく、効率的に行えるので、おすすめのやり方です。
具体的なやり方は、下記のAhrefs公式ブログに書かれているので、Ahrefsを契約している方はぜひ一度実践してください。
https://ahrefs.com/blog/keyword-cannibalization/
5. SEMRushを利用する方法(有料ツール)
日本ではあまり利用している方が少ないツールですが、SEMRushを利用すると、これまた非常に簡単にカニバリが特定できます。

SEMRushのPosition Tracking(順位計測ツール)に登録しているキーワードの中で、カニバリが発生している場合には、「カニバリゼーション」のタブで教えてくれます。
順位を確認するたびに、合わせてカニバリが発生していないかも確認できるのは作業効率的にも楽でいいですよね。
キーワードカニバリゼーションの解消方法
カニバリのSEO的な影響と、特定方法をご紹介しました。
具体的に、カニバリが発生している記事が特定できたら、次は解消していきましょう。
カニバリの種類ごとに、どのように対処すべきかは変わるので以下の分岐マップを参考にご自身のサイトではどのように対処していけば良いのかを考えましょう。
カニバリの解消のフローチャート

上記の概念を頭に入れて、カニバリ解消方法を考えていきましょう。
フローチャートの詳細を説明します。
Q.1 カニバリ発生?
この記事で紹介した方法などを用いて、カニバリが発生しているかどうかを特定しましょう。
カニバリが発生していないのであれば、何もしなくて大丈夫です。
カニバリが発生しているものがあれば次の質問に続きます。
Q.2 ページは必要?
カニバリが発生している場合には、どちらのページをPLP(そのキーワードに対して優先的に表出したいページ)にしたいかを考えます。
PLPではないページ(つまり、カニバリを発生させている邪魔なページ)は必要かどうかを考えてください。
必要かどうかを考える際には、「そのページはユーザーにとって必要か?」だけを考えてもらえたら大丈夫です。
特にそのページが、不要であれば「Q.3-1」、必要であれば「Q.3-2」に進みます。
Q.3-1 SEO価値はある?
ページが不要であればまず削除を考えるかもしれませんが、その前にそのページにSEO価値があるかどうかを考える必要があります。
SEOは、ページごとに集めた「資産」の総和でドメインの価値が決まります。
ここでいうSEO価値とは、被リンクやSNSのシェア数などの基本的な外部要因を考えたら大丈夫です。
そのページに被リンクがついていたり、過去にSNSでバズったりして拡散数が多い場合などには、削除してしまうことでそれらの資産が失われてしまうため、もったいないです。
少しでも価値があるのであれば、リダイレクト(301転送)をして評価統合を実施しましょう。
不要なページから必要なページ(PLPにしたいページ)に向けてリダイレクトをかけます。
301リダイレクトは、転送元の評価を転送先に80%程度渡すと言われており、100%の評価統合は難しいですが、やらないよりは確実に良いでしょう。
逆にSEO価値がないのであれば、シンプルに物理削除(404削除)で問題ありません。
Q.3-2 LPとして必要?
ページが必要な場合には、LPとして必要かどうかを考えます。つまり、検索結果経由でSEO流入を獲得する必要があるかどうかです。
LPとして必要なページは「カニバリが発生しているキーワード以外でも、それなりの流入が発生している」ものです。逆にLPとしては不要なページは、内部リンク遷移でのみユーザーを送客するコンテンツや、SNS経由からのみの流入を狙うようなページになります。
LPとして必要あれば、SEOチューニングをして、カニバリを解消する努力をします。
逆に、LPとして不要であればnoindexタグによるindex除外やcanonicalタグによるURL正規化を実施しましょう。
どういった目的でそのページを残しておきたいのかを考えて、適切な対処方法を実施しましょう。
両方のページを残したい場合のSEOチューニングの方法
カニバリが発生した際に、どちらのページもLPとして機能させたい場合には、SEOチューニングを実施します。
実現可能性はあまり高くないのですが、下記のような施策を実施することでカニバリが解消されることが多いです。
- TDH(タイトル・ディスクリプション・Hタグ)のチューニング
- 内部リンクのチューニング(アンカーテキスト施策)
TDH(タイトル・ディスクリプション・Hタグ)のチューニング
カニバリが発生する原因の多くが、TDHの重複です。
Googleは、ページをどのキーワードで評価するかをTDHを見て判断すると言われています。
カニバリが発生しているページを確認すると、両方のページのTDHにカニバリが発生しているキーワードが含まれてしまってないでしょうか?
仮に、そのような状況であれば、そのキーワードで検索結果に出したくないページのTDHからは対策キーワードを抜きましょう。
割とこれだけでカニバリが解消することも多いです。
meta descriptionについては特に疎かにされがちですが、カニバリ対策には非常に効果的なタグになります。
下記の記事なども参考にしながら、meta descriptionを記述していない方はぜひ記述してみてください。
内部リンクのチューニング(アンカーテキスト施策)
TDHのチューニングをしてもカニバリが解消されなかった場合には、内部リンクのチューニングも実施しましょう。
やり方としては、正規化したいページ(検索結果に出したいページ)にむけて、正規化したくないページ(検索結果に出したくないページ)から「対策キーワードをアンカーテキストにしたテキストリンク」を飛ばします。
内部リンクは、Googleがサイト内でどのページの重要度が高いのかを測る上で利用しています。
よって、内部リンクにて主従関係をつけてあげることでカニバリを解消することができる場合も多いです。
アンカーテキスト施策が機能する理由は、Googleがどのようにアンカーテキストを取り扱っているかを把握することで理解できるかと思います。
下記の記事にてアンカーテキストの重要性やどのようなテキストにしていくべきかを解説していますので興味のある方はぜひ読んでみてください。

SEOとカニバリに関するよくある質問
SEOコンサルティングをする中で、カニバリに関する質問はかなり多いです。
具体的な質問とその回答をおまとめしますので、ご自身のサイトに当てはめて情報をご利用いただけますと幸いです。
- 特定のKWで、半年間以上、1位にいた記事(以下、記事A)がありましたが、直近、圏外に飛ばされました。 これと同時に、別の記事(以下、記事B)が検索15〜20位にくらい顔を出しました。 記事Aは、fetchすると検索順位「1〜3位」くらいに戻りますが、また数時間後に確認すると圏外に飛び、再び、記事Bが検索2ページ目(11位〜20位)に現れます。 基本的には、放置するしか方法は無いでしょうか?
-
状況としてはカニバリが発生しており、Googleが対策KWに対してどちらのページが適切か(関連度が高いか)を判断できていない状況だと思います。対策方法としては、まず記事Bから記事Aに対して内部リンクを飛ばす(その際にアンカーテキストに対策KWを含めてあげるとベター)ことをしてあげてください。それでも直らない場合には、記事AのTitle, meta description, Hタグから対策KWを抜いてあげるなどの細かい調整をしましょう。
まとめ
カニバリのSEO的な影響や、特定方法・解消方法をまとめました。
カニバリは、概念さえ理解すれば簡単に特定できます。
今回は、下記のようなツールを用いてカニバリを特定する方法をご紹介しました。
- GRC
- site:コマンド
- Googleサーチコンソール
- Ahrefs
- SEMRush
上記のようなツールを用いてカニバリが特定できたら、下記の分岐マップを利用しながらカニバリの解消方法の方向性を定めましょう。

方向性を定めたら、各種施策を丁寧に実施しながら、実施後にはもう一度ツール等を用いて効果検証をして、1ページずつ丁寧に解消していけると良いと思います。
カニバリはSEOの評価を下げかねない深刻な問題です。
まずは現状把握から始め、その後は定期的にカニバリが発生していないかのチェックができる運用体制を整えられると良いかと思います。